「先輩、あたしを置いてきすぎだよ・・・」

もう夕日が沈みかけた帰り道。
電柱の影が長くなってく。
気持ちがぐちゃぐちゃしてる。
あたしが悪いんだ。
今頃きっと厭きれてる。
子供だと思われたかな。
1つ上の加藤先輩は
あたしの大好きな人。
1ヶ月前に玉砕覚悟で告白したんだ。
結果、彼女になれた。
すごく幸せだったんだけど。
受験生だし、塾も掛け持ちしてる先輩。
あたしは少しぐらい寂しくても、
やっぱり先輩を応援しなきゃいけないのに。
自己嫌悪。
今日は一緒に帰る約束だったんだよ。
でも学校の仕事があるんだって。
風が冷たい。
そんなコトが多くて、
言っちゃった。ホントに嫌になる。
何であんなコト言っちゃったんだろ。
先輩の声が頭の中をエンドレスで流れてる。

「李那、ごめん。でも忙しくて・・・」
「いいよ、もう。先輩がそれでいいなら。」
涙がたまる。
「いいわけないだろ!!」
先輩の怒った瞳。
「いいんじゃん!!!」
「ごめん、俺は自分の仕事も勉強も全部やりたいから。」

冷ややかにそれだけ言って行っちゃった。
あたしだっていいわけないのに。
つまんない意地張って、
結局後悔。
異常に寂しい。
家についた。
もう暗い。隣に先輩はいない。
嫌いになっちゃったかもしれないなぁ。
一気に自分の部屋まで走った。
ドアを閉めた瞬間、
やっぱり涙が溢れた。
電気もついてない部屋に、
座り込むあたし。
「もう嫌だよ・・・」
止まらない。
止められない。
月明かりが窓から差してくるのが分かった。
寂しいよ。
ヴーヴー
携帯がかばんの中で鳴ってる。
電話だ。
こんな声じゃでられないよ。
でる気分でもない。
バイブは鳴り止んだ。
「ぅー…」
急に静かになった部屋。
戻ってくる淋しさ。
思わず、
かばんから携帯を取り出した。
“留守電在り”
『加藤先輩』
「・・!?ッ」
加藤先輩…
留守電…。
怖い。でも聞かなくちゃ。
ゆっくり再生ボタンを押す。
『李那、ごめん。
俺、李那が大事だよ。
勉強より、仕事より。
電話またします。』
ピー…
すぐに指が動いた。
気付いた時には先輩に電話をかけてた。
プルルル…プルルル…
ピッ…
「李那…???」
先輩だ、いつもの先輩の声。
「うん、先輩…ありがとう…。」
「何!?え、泣いてる…?」
「だってー…先輩に嫌われたと思ったから…」
「・…」
「先輩…?」
「ねぇ、窓の外見て?」
「え、…うん、分かった。」
もう真っ暗だ。
月明かりだけ。
そっとカーテンを寄せて、
窓をのぞいた。
誰かが手を振ってる。
携帯を片手に持った、加藤先輩・・・?
急いで窓を開けた。
風が流れ込む。
「李那ー!!」
電話から聞こえる先輩の声。
手を振って笑ってる先輩。
「良哉ー!!」
叫んだ瞬間、先輩が動きを止めて
驚く。
初めて呼んだ先輩の名前。
すぐに2人で笑いあった。
ある寒い冬の日。
あたしだけは暖かかったはず。