私のすべてを込めて
瞳を閉じてそっと深呼吸をした。
あざやかな記憶、今もあのときも変わらぬ幸せに
あなた達に
ありがとうとただそれだけを。

・・・RIVIVE・・・
#12.笑顔

もういつの間にか冬。
肌寒かった風も、もう突き刺さるくらいに冷たくなってた。
「寒いねー」
「ホント、馬路無理だー」
そんな中、美佳と二人で帰る。
「明日終業式じゃん!?」
美佳が少し嬉しそうに笑った。
「もう休み⌒」
私は少し淋しい。
休みなんかなきゃいいのになーってそのくらいに。
「てか、由貴とじゃもっと寒くなるよー」
美佳は少しスネながらマフラーで手を暖めてる。
「何それ〔笑〕私には真がいるからいいけどねー」
「そーゆーこというなよ!!寒いの!」
笑いながら美佳が早歩きになった。
もう冬だよ。もう。

次の日。
当たり前のようにざわついた教室。
「あのさ、今度クリスマスパーティしない???」
綾が突然切り出した話に
私はいつになく乗り気になった。
クリスマスパーティか。久しぶり。
「え??別にいいけど、どこでやるの?」
美佳が教科書を探しながら言った。
「んーやっぱ学校でしょ」
私は当たり前のようにそれだけ言った。
綾も美佳も一瞬止まって
口元で笑う。
「いいね、それ」
もう12月だし、休みに入ったら
バレないし。
「じゃ、24日の3時に学校でw」
美佳もいつの間にか乗り気になって
私達は体育館へ向かった。

24日、午後3時。
お菓子と缶ジュースをみんなで買って、
学校の裏門からグランドに入った。
「誰もいない???」
綾が用心深く聞く。
「大丈夫大丈夫⌒」
美佳はもうはしゃぎまくってる。
私も久しぶりにこんなことした。
なんかこんなことするだけでも
楽しいって笑っちゃうな。
3人で静かに勢いよく、校舎ぬけ口まで走った。
校舎ぬけ口、いつも開いてるはずのボロいドア。
「今日も開いてますよーに・・・」
私がゆっくりドアノブをまわす。
冷たい。
早く中に入らないと凍え死ぬ!
キィ
「空いた空いた!早く!」
急いで校舎の中に入った。
さすがに休み中の校舎の中は、
静まり返って少し暗かった。
「良かった⌒w」
綾が手をこすりながら静かに笑う。
「ホントに!」
素直に嬉しい。
スリルがあるというか。
私達は2-Bに着いた。
日の光が丁度差して、いい感じ。
「なんか綺麗じゃない???」
美佳がカーテンを思いっきり開ける。
一気に明るくなった。
「思ったーw」
綾が缶ジュースを開けてる。
私も椅子に座った。
「てか、ホントに早いよね、もう休みかー。」
私が窓の外をぼんやり見ながら言う。
「もう由貴が来てから、結構経つじゃんね!!!
早い早い!!!」
美佳も座った。
私がここにきてから、あともう少しで三ヶ月。
三ヶ月。
少し胸が痛んだ。
「あ!そうそう!カメラ持ってきた!」
綾が私を気遣うように、カメラを出した。
パシャ
「あ!」
撮られた、悔しい!
「撮っちゃった⌒!!!♪」
綾がパシャパシャと無鉄砲に撮りまくる。
「ちょっとー!!!笑」
美佳がカメラをひったくって
綾と私を撮り始める。
「そういうのやめようねー!」
必死に顔隠す。
思いっきり笑っちゃってるんだけど。
そんなで小一時間、
私達はバカやって、話していた。
ガラッ
「!?」
「オッス」
真???
え、なんでここにいるの???
「やっときたー!!!遅いよー?」
美佳がにやけながら私を見る。
「悪い悪い!」
真はいつも笑顔でこっちへきて椅子に座った。
「あたしらから由貴のためにサプライズプレゼント⌒!」
綾が楽しそうに言った。
「え、ちょっと!馬路びっくりしたー」
ホントにびっくりした。
真が来るなんて思ってもないし。
でもやっぱ嬉しい。
ちょっと恥ずかしいけど。
「てか、クリスマスイヴに彼氏と過ごさない方がおかしいんだよ由貴ー!!!」
美佳が少しスネたような顔をした。
「じゃ、こっからは別行動で!」
真が私の手を引いた。
「え!?ちょっと!?」
転びそうになりながら椅子から離れる。
「行ってらっしゃーい」
2人は相変わらず、にやつきながらこっちを見てる。
教室からでて、
真と2人になった。
少し緊張してる。
「びっくりした???」
無邪気な笑顔でのぞきこんできた。
「うん、すっごいびっくりしたよ・・!」
恥ずかしいんだって。
思わず目を伏せる。
「あのさ、少し早いけどこれ」
プレゼント。
「え、いいの?」
「うん、だって由貴のために持ってきたんだもん〔笑〕」
おそるおそる小さな包みを開けた。
ネックレス、ハートの。
「ありがとう」
チラっと真を見た。
また笑ってる。
「良かった、喜んでもらえて^^」
真の笑顔が一瞬ぐらついた。
…?
バタン
私は気付かないうちに廊下に倒れこんでた。
ネックレスが落ちてる。
手が動かない。
「由貴!?」
鼓動が早くなってる。
息が苦しいよ。
苦しくなってく。
「し…!」
真の名前が言えない。
苦しい。喉がおかしい。周りがぐらぐらしてる。
「由貴!?ちょっと待ってろ!!大丈夫だから!」
真が携帯を出した。
「ダメ…!」
必死で真の携帯を抑えつけた。
この苦しさは今までとは違う。
そう、私には分かった。
「なんで!?」
苦しさが少し引いてゆく。
「お願いだから、綾と美佳を呼んで。
屋上に連れてって」
か細い声でしか言えない。
「だって発作じゃん!?」
「お願い。私…」
真の服を強く握り締めた。
通じたかどうか分からない。
今はこれしかできない。
一瞬の沈黙。
目を見開いた真。
とたんに真は走っていった。
苦しさが少し引いてる。
息は苦しいけど。
周りは相変わらずぐらぐらしてる。
バタバタと勢いよく走ってくる音が聞こえた。
「由貴!?」
美佳と綾が体を掴む。
真が私を抱き上げた。
「早く!!!病院!!!」
泣きそうな声で美佳が叫ぶ。
やめて。私が行きたいところは病院じゃない。
苦しい。早く。
「やめろ」
真が一言だけそういった。
あたりがしんと静まり返る。
「由貴がそうしたいって言ってる。
屋上に行く」
「でも!!」
今度は綾が叫んだ。
また周りがぐらぐらしてきた。
「由貴の最期の頼みなんだよ!!!」
真が叫んだ。
綾と美佳が目を見開く。
「はやくこい」

屋上についた。
空が綺麗。
真は私はあお向けに寝かせた。
「由貴…?」
深呼吸をする。
「これでいい・・?」
真の顔から涙が落ちたのが見えた。
ごめん、ホントにホントにごめんなさい。
「うん」
綺麗だよ、私は笑った。
「綾、美佳、綺麗だね、この空」
美佳と綾も泣いてる。
「由貴?…綺麗だね、ホントに。
うちらが泣いたときみたいだね」
美佳が息のつまるような声で言った。
そう。あの時みたいだね、美佳。
「これが見たかったんだよね、由貴???」
綾が途切れ途切れにそう言った。
風が吹く。
さぁっとすべてが揺れた。
「うん。これが見たかったんだ。」
綾を見て笑う。
全然苦しくないの、本当に。
神様?きっとこれがクリスマスプレゼントなんだよね?
この時間が神様の最後のプレゼントなんだよね?
「美佳、綾、真。本当にありがとう。
会えてホントに良かった」
最期に最高の笑顔を。
「俺もありがとう、由貴に会えて本当に良かった大好きだよ忘れんな!」
真がいつもの笑顔になった。
ただ頬には涙が途切れることなく流れてるんだけど。
「あたしもだよ、馬路ありがとう。大好きだからね!」
泣きながら笑ってる。美佳、いつも一緒に泣いてくれて
笑ってくれてありがとう。
「ホントに由貴を会えて良かった、ありがとうこれからも大好きだからね!」
必死に涙をぬぐってる。綾はホントに優しいね。
そうやっていつも私のこと考えてくれてありがとう。
空が一気に濃く染まっていく。
「最高のクリスマスイヴだよ」
ネックレスを握りしめた。
綾、美佳、真を見た。
「本当にありがとう」
みんなが私のために笑ってくれた。
私も笑うよ、みんなのために。

この世界は私のタカラモノでした。
この三ヶ月は今までで一番大切な時間でした。
蘇る記憶、流れる想い出。
お別れだね、みんな。
大好きだよ、ずっとずっと。

綺麗な空の下、
私は笑って、静かに消えた。