私はここにきた意味を
自分の手で壊してしまった。
でも、
「それ」を手放した瞬間、
光が少しだけ見えた気がしたんだ。

…RIVIVE…
#4.本音

「聞いてくれてありがとね。」
私は呟くような小さい声で、美佳に言った。
鼻がつまってうまく声が出せない。
「ううん、全然いいよ。」
美佳が優しく頷いてくれた。
「あたし、聞けて良かったよ。由貴に絶対後悔させないよ。
言ってくれた事。」
私も思わず微笑んで、階段を降りて
バイバイと言って別れた。
重くて重くて仕方なかったものが
私の手を離れて、
妙に体が軽い感じがした。
でも今までになく、気持ち良かった。
「ホントバカだよ、私。」
帰り路、空を見上げて独り言を言った。

「おはよう」
教室に響いた私のあいさつに、
クラスのみんながどんなに驚いて振り向いたか、
笑っちゃうくらいだった。
「おはよう、由貴^^」
美佳は今までにない笑顔を見せながら
あいさつしてくれた。
綾は、驚きの表情をすぐに切り替えて
おはようと言ってくれた。
まだ綾も他のみんなも私が3ヶ月で死ぬコトは知らない。
私は美佳だけ分かってくれてれば
それで十分。
美佳は後悔させないって言ってくれた。
美佳が望んだコトでもある。
だけどみんなに辛さを教える必要はないから。
「宿題多かったー(><)」
「ホントだよねー!終わってないし!!」
綾は嬉しそうに話に飛びついてくる。
かばんをひっかきまわしながら、
私は本来の私で振舞った。
自分を隠すのはやっぱりダメだ。
生きるなら最期まで本当の自分で生き抜きたい。
でもやっぱり、美佳、綾以外とは距離を置かなきゃいけない。
仲良くなりすぎたらだめなんだ。
それはみんなのため。
あっという間に時間が過ぎてった。

何か最近視線を感じる。
同じクラスの藍実だと思う。
1番うるさくて、1番気が強い感じ。
なんかしたかな、私。
あのコは近づきたくない。
たぶん、相性がかなり悪い。
「なんかこの頃さ、
藍実からガン見されてる気がする。。。」
美佳に小さい声で話しかけた。
「???大丈夫じゃない?別に由貴あんま、関わってないし」
「そーだよーw関わんなければ別にあっちも何も思わないしょ!」
2人はそこまで気にしてはいないようだった。
「そっかー」
話が流れた気がした。
でもそんな気にすることでもないのか、んー。

医者に行くのはやめた。
だから私が実際に、あとどのくらい生きれるのかは、
分からない。
明日死ぬかもしれない。
やっぱり私は死が怖いよ。
帰り道、私はいつもそう思う。
夕日に照らされる、丁度その頃。
此処から本当にいなくなってしまうのか、
信じきれなくて、
信じたくない。
涙はもうどうしようもないくらいに溢れるし、
それは仕方ないんだけど。
いつもの見慣れた世界がなくなるのはもう分かってたはずなんだけど。
でも後、どれだけ生きられるか、
それは私にかかってるんだから、
頑張ろうと思って空を見上げるんだ。
今、私は生きてる。

「おはよう」
「おはようー」
美佳と綾が返してくれる。
いつものように、教室に入ってきた私は、
みんなから見れば、“なんとなく怖いコ”。
私がこの前キレてからずっとそんな感じ。
それでいいんだよ。
私が歩いていけば避ける、それでいい。
関わらなくていいんだ、それがどんな形であっても。
窓から入ってくる風が気持ちいい。
もう秋になってくのかな。
何気なく椅子を引いた瞬間に、
事はいきなり起こった。
バラバラバラバラ・・・・。
何・・・・?
大量の画鋲が私の椅子から転がり落ちた。
・・・・・画鋲・・・・?
綾が驚いて私を見つめる。
私は落ちた画鋲を全部拾って、
クラスの画鋲入れに入れた。
「全然こんなの平気だから大丈夫」
少し笑って未佳と綾に言った。
「ほんとに大丈夫・・・???」
綾は不安そうな顔でまた私を見つめる。
「うん、ほんと全然平気^^ほっとくのが1番いいと思うし。」
みんな私が強がり言ってると思ったかもしれない。
でも私はこんなことでどうにかなるほど、
弱くはない。
美佳も綾も分かってくれたかどうか分からないけど、
こんな事に時間を使っている暇はないから。
私は藍実を見た。
藍実も私を見ていた。
誰がやったかなんてとっくに分かってる。
あっちもそれは分かってる事。
秋の風が少しだけ冷たく感じた。
灰色の雲が空を覆う。
私の瞳は決意に変わった。