みんなに笑ってもらえた。
私をみんなは受け入れてくれた。
    短い命だって知ってても、
哀しい思いをすることを知っていても、
みんなは私を
真っ直ぐ見つめてくれたんだ。
その中で
ひたすら私を見つめる瞳に
私は気づかなかった。

・・・RIVIVE・・・
#8.衝撃

私の運命を告白したあの日から、
3日が経った。
自然と笑えるようになった。
みんなが声を掛けてきてくれるようにもなった。
あの後、藍実も謝ってくれた。
私は幸せなんだ、今。
そう実感がわく。

「おはよー★由貴ーwww」
「由貴、おはよう!!」
「おはよ、美佳、綾www」
いつものように、席につく。
今でもやっぱり、
美佳と綾と一緒にいる。
「おはよう、由貴チャンw」
「おはようw礼奈^^」
いろんな子とあいさつする。
嬉しい。
本当に嬉しい。
忘れかけてた生活が
また私のところに戻ってくるなんて
こんな幸せはないと思う。
でも私はこの頃、夢を見る。
毎日、毎日同じ夢。
そう、私が死ぬ夢。
みんなと一緒に笑ってるこの瞬間も
昨日も今日も明日も見るだろう夢が
忘れられない。
ちょうどこんな風に
幸せだなぁってふと感じてる時に
苦しくなって、
見開いた目でみんなを見るの。
ひざががくんって落ちて、
知らない間に両手で胸を押さえてるんだ。
苦しくて、怖くて、
みんなは消えて、
私だけしかいない空間で
ただ最期まで息をしてる夢。
「早く死んじゃえばいいのに。」
そう思って夢が覚めるの。
涙で頬が濡れてる。
絶対思いたくないのに、
夢でも嫌なのに。
幸せだから怖いの。
すごくすごく。

朝、いつものように学校に来た。
もうすっかり冬に近づいてる。
空が綺麗。
下駄箱で上靴に履き替える。
・・・?
手紙?
手紙が入ってる。
「?」
白くて普通の封筒。
おもむろに開けて便箋をとりだす。
『津嶋由貴さんへ
俺は津嶋さんが転入してきた時から
津嶋さんを見るようになってました。
好きです。良かったら付き合ってください。
返事は手紙でも何でもいいので
必ず下さい。
      久遠真』
・・・・!?
告白・・・!?
すぐに封筒に手紙をしまった。
びっくりしたー。
久遠真・・・同じクラスだ・・・。
話したこともない。
ただのクラスメイト。
・・・・でも嬉しい。
こんなコト今までなかったから・・・
かな?
早足で教室に向かった。
教室に着くまでにいろんな事を考えた。
けど、教室に着いたときには
すでに答えは決まってる。
NOだよ。
普通のクラスメイトだから。
私は死んじゃうから。
「おはよう!」
「なんか元気じゃん、由貴〔笑〕」
「そう?普通だよw」
「えぇー!」
でも嬉しいんだ。
気持ち伝えてくれてありがとうって
ちゃんと言わなきゃ。

放課後、
久遠君に声をかけた。
「久遠君・・?」
さっと振り返った。
よくよく見ると、綺麗な顔してる。
「え?あ!はい!」
少し慌てながら、向き直る。
「えっと、ちょっといい・・?」
「はい、大丈夫です・・!」
不安そうにうなずく久遠君。
男子ってあんま関わったコトなかったから、
よく分からないけど、
いい人そうだな。
罪悪感がある。
こんな人をフるなんて。
一緒に屋上に向かった。

さぁっと響く葉の音。
言おう。
「あの、すいません。
私、こういうの慣れてないんですけど、
付き合えません。ごめんなさい。」
久遠君はしっかり私を見ていた。
「返事聞けてよかったです。
でも1つだけ聞いていいっすか?」
「何?」
「理由を教えて下さい。」
・・・・・
この人の目は真剣だ。
言わなきゃいけない、
ちゃんと。
「久遠君はクラスメイトとして、
見てたから。
あと久遠君も知ってる通り、
私はいついなくなるか分からないから。
久遠君を悲しませるからだよ。」
見据えて言った。
一瞬の沈黙。
久遠君が口を開いた。
「俺は、
クラスメイトとして見てたからっていう理由は納得できる。
でも、いついなくなるか分からないっていう理由は納得できない。」
「・・・!」
びっくりした。
どういう意味・・・?
「俺は、3日前に津嶋さんの事情を知りました。
でもそれで俺の気持ちが変わったわけじゃない。
俺は津嶋さんのコトが好き。それだけです。
悲しませるとかは関係ない。
だからそんなコト言わないで下さい。」
久遠君は瞳をそらさずに、
真っ直ぐ私に言った。
この人、本気だ。
目が少し潤む。
それでも私は、この人の好意を受け取れない。
絶対に後から後悔するのは
きっと久遠君だから。
「でも、私は周りを苦しめたくないから。
後から、絶対に苦しめるようなコトはしたくない。」
はっきり言わなきゃ伝わらない。
「フラれたのはいいんです。俺頑張りますから。
でも、その理由は忘れてください。
津嶋さんは自分のコトでもきっと苦しいのに、
俺のコトまでそんなに考えないで下さい。
今日はありがとうございました。
俺、ホントに頑張りますから!!」
優しく笑った。
涙が本気ででそうになった。
だめだよ、辛いのはこの人の方なんだから。
その瞬間、
なんだか視界が揺れてるコトに気づいた。
なんだろう、フラフラする。
「津嶋さん・・・?」
不安そうな久遠君の声が響く。
バタンッ・・・
倒れた。
太陽の光が真正面に見える。
「津嶋さん!?」
久遠君の声が遠くなる。
私は気を失った。